マダガスカルコーヒーとは

 

マダガスカルから届いたコーヒー アイアイのコーヒー

(マダガスカ写真提供:アタカ通商)

マダガスカル・ブルボン(アイアイのコーヒー)のふるさと

この農園では、マダガスカルでほぼ壊滅状態となった〝ブルボン〟と呼ばれる、古い歴史を持つコーヒー品種を今も細々と守り続けています。

もともと、マダガスカルには十九世紀半ば、レユニオン島(マダガスカルの東800kmにある小島)で発見されたコーヒーが持ち込まれました。

このコーヒーは後に、アフリカのタンザニアやケニア、南米はブラジルへと西回りで世界に広まってゆきます。

その品種がブルボンです。(ブルボンはレユニオン島の古い呼び名)小さな島を起源とするコーヒーが辿った道には数々の物語が埋もれていることでしょう。

その歴史と希少性で知られるマダガスカル・ブルボン。オレンジピールのようなかすかな苦みに、なめらかな舌触りとまぁるい甘さが楽しめます。

マダガスカルコーヒー 1億年前の地球を保存した地球の中の別世界

マダガスカルは中生代、恐竜の時代にはゴンドワナ超大陸の中央にありました。

1億年前までにはこの超大陸は、南極、南アメリカ、アフリカ、レムリア、オーストラリアに分裂し、さらにインド大陸がレムリアから分かれて北上し、ユーラシア大陸につながりました。レムリア大陸の残りはマダガスカルとしてそのままインド洋の大海の中にとどまって現在に至りました。人類がマダガスカルに入ったのは、せいぜい2千年前のことです。

アイアイの森 マダガスカルコーヒー

アイアイはマダガスカル語では「ハイハイ」で、「よくは知らない」という意味です。その特別な形から世界の三大珍獣のひとつとされてきたアイアイは、1980 年代には「絶滅か?」と考えられていました。その野生の姿を世界で最初に撮影したのは、日本のテレビチームでした(1984 年)。このチームに参加していた私は、アイアイの特別な形が、その主食であるラミーの果実の種子食に対応していることを明らかにしました。

アイアイは針金のような細い中指でラミーの果実を叩いて、コウモリのような大きな耳で果実が熟しているかどうかを聞き分け、リスのような鋭い歯で堅い種子の殻を削りあけ、中指で種子の中身を掬い取って食べます。

アイアイは6千万年前に現れたと言われます。マダガスカルの動物を見る時、時の単位は1年ではなく、1千万年なのです。

アイアイの主食のラミーは、マダガスカルの川辺を代表する大木です。ラミーの大木のあ
る森には、たくさんの生き物がすむマダガスカルにしかない生態系がありました。この森には、指先に吸盤をもったコウモリや世界一大きなカメレオンや何種類ものバオバブやタビビトノキなど、珍しい生き物で溢れていました。

しかし、人類がこの島に漂着して以来、人びとは水辺に住み着いて木を切り、田畑を作り、森を焼いて牛を放牧したために、アイアイたちのすむ森は一年ごとに小さくなっていきました。

森を焼く火炎に追われて動物たちが逃げ惑う様子を目の当たりにした時、森を守ることの大切さを痛感します。まして、マダガスカルの西部に広がる乾燥地帯では、森は人びとにとっても飲み水と田畑のための水源なのです。

アイアイの森を守る アイアイの森 マダガスカルコーヒー

森を守ることは実に難しいことです。1992 年から2001 年までマダガスカルに住んで、森が失われる実態を見た私は、動物の保護は「できるかできないか」ではなく、「見た者には責任がうまれる」のだと思いました。多くの人びとの協力で、アイアイの森を守るために2002 年にマダガスカルと日本、フランスとアメリカにアイアイ・ファンドができました。

同じ年にアイアイの保護区「アンジアマンギラーナ監視森林」がマダガスカル政府によって認められ、その管理をマダガスカルアイアイ・ファンドが行うことになりました。森林監視員をおき、森林火災の消火や防火帯の設置などを続けてきました。今ではラミーなどの木の苗床もでき、保護区への植林も始まりました。

「飲み水や田畑の水を確保するためには、森を守らなくてはならない」というアイアイ・ファンドの主張も村人たちに理解されるようになりました。

これからは、小中学生たちにも森林監視員の手助けと防火や植林の仕事に参加してもらう予定です。マダガスカルの将来の世代が、森の大切さとそこにすむ生き物と共に生きる知恵を生み出すことを願っているのです。

表紙の答えは「アイアイの食べ痕が残されたラミーの種」です。

アイアイの森のラミーの大木の下を探せば、見つけることができるかもしれません。さまざまな生命を育んできたこの森も今や切れ切れになり、そこに住む特別な生き物たちがこの世界から失われようとしています。

「できることから、今すぐに始めたい!」

子どもの頃に歌った南の島のおさるさん、アイアイたちの苦境に手を差し伸べる手立てのひとつとして、「アイアイのコーヒー」は生まれました。(2008 年11 月11 日)

それは、ためらいや気負いを飛び越えて、みんなで起こすコーヒー1 杯分の小さなアクション。

芽吹いたばかりのラミーの苗はやがて大木に育ち、アイアイの森に豊かな恵みをもたらしてくれるでしょう。「アイアイのコーヒー」も、未来に続く何万本もの苗を植える力として育ちますように…。

遠く離れた南の島の生き物たち。

その静かな野生の営みをこれからもどうぞ一緒に見守って下さい。